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市長室ブログ

施政方針演説―令和3年度当初予算案を提案(2月26日①)

古賀市議会の定例会が26日、開会しました。本会議で、私は令和3(2021)年度の施政方針演説を行い、当初予算案など44議案を提案しました。施政方針はまちづくり全般にわたるため、超長文になります。演説時間は62分。古賀市HPにPDFデータを公開しましたので、こちらをご参照ください。

古賀市議会の定例会が26日、開会 令和3(2021)年度の施政方針演説を行い、当初予算案など46議案を提案しました

なお、この中で、市政運営の理念や重点的な取組を私自身が執筆した「1.はじめに」は全体28ページのうち15ページとなっており、特に大切と考え、以下、全文を掲載します。

1. はじめに

地方に「あるもの」を起点に考える。私たちの地域の魅力として現に「あるもの」に、新たな価値をつなぎ、地域社会をつくっていく。新型コロナウイルス感染症によって価値観の変容が起き、東京一極集中の打破と地方分散型社会を実現するチャンスが到来しています。この機を捉え、私たち地方自治体には主体的、能動的にその実現に向けた政策を展開していくことが求められますが、そもそもこれはコロナ禍以前からの国家的課題でした。私は県議時代の2014年、都市と地方の格差を考えるシンポジウムを東京で開催し、コーディネーターを務めました。そのとき、パネリストだった社会活動家の湯浅誠さんが提示した視点が事の本質を突いたものとして記憶に残っています。「地方は自分の地域に『ないもの』に注目しがち。そうではなくて、東京になくて、地方に『あるもの』を探し出すべき」。ないものねだりではなく、あるもの探し。そもそも私たちの地域にある資源を発掘し、磨き、つなぎ、魅力として発信していく。古賀市はコロナ禍以前からこの理念を大切にしてきました。

こうした考え方を基礎として、これからのまちづくりを進めていくうえで、20世紀を代表する経済学者、ヨーゼフ・シュンペーター(1883~1950)の提唱したイノベーションの概念が重要になってくると考えます。1912年に刊行されたシュンペーターの代表作「経済発展の理論」の初版完訳本が、日本で初めて昨年5月に出版され、私も通読したところですが、それまでの経済学を「静学」とみなし、これに対する「動学」という新たな理論を打ち出すことで、経済の「発展」を解明しています。この中で、イノベーションについて「新結合」という言葉を使い、その概念を示しました。曰く、経済発展つまり進歩をもたらすのは「企業者」と表現する「行動する人」である。「企業者」こそが、従来の「静態的経済」から「発展」を生み出すことができる主体であり、その活動の本質は「経済的可能性として存在しているものを新しい結合(新結合)に具体化して遂行することにある」。「企業者」は精力的、意欲的に行動するものであり、新たな生産物を生み出したり、新たな生産方法を導入したりするなどそれまでとは異なる方法や組み合わせを見出し、実践する。こうして新たな創造が生まれ、経済が発展していく。このように考察し、「新結合」の実現が社会の変化につながることを示しています。

私たちはこれからウィズコロナ、アフターコロナも見据え、地域社会をつくっていかなければなりません。これまで以上に、受動的ではなく能動的に行動していくことが求められています。そして、私たちの地域に「あるもの」を起点に、様々な価値を結び付け、新たな創造につなげ、持続可能性を高めていきたいと思います。

こうしたことを強く念頭に置き、令和3年度の施政方針を申し上げます。

昨年来、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、私たち人類の真価が試される局面が続いています。当然、古賀市の自治体経営のあり方も不断に問われています。この間、私たちは未知のウイルスと対峙し、市民生活の現場で起きていることを即時的に捉えるとともに、現場で起きているであろうこと、起きうるであろうことに想像力を働かせ、速やかに対応策を講じてきました。特に、より厳しい状況にある方々が苦境を乗り越えられるよう、チルドレン・ファースト、経済的困窮者、事業者への支援を中心に国や県に先んじて事業を展開できたと考えています。特に、子育てと教育の現場で子どもの「心」を大切にする取組を進めてきたこと、児童虐待の潜在化を回避するために乳幼児と保護者の居場所を開き続けたこと、ひとり親家庭や妊産婦、医療的ケア児のサポートなどは高い評価をいただいており、これまでの基本姿勢を堅持し、危機が継続する令和3年度も的確に対応していく覚悟です。新型コロナウイルス感染症の終息に向けて、県及び医療機関等と連携し、接種体制の構築を図り、市民の皆さまに迅速にワクチンの予防接種を実施します。また、保育園や高齢者施設等事業の継続が求められる事業所において、新型コロナウイルス感染症の陽性者が確認された場合などに、スクリーニングを目的として、PCR検査等対象外の方が市で購入・備蓄する抗原検査キットを使用し、各自で陽性判定の有無を早期に確認することにより、安心して事業の継続ができるよう支援を行うとともに、感染拡大を防止し、医療提供体制への負荷を軽減します。

さらに、目の前の危機対応とあわせて重要なことは、新型コロナウイルスの感染拡大による社会の価値観の変容を捉えていくことです。市政運営の根本的な理念や基本方針を堅持しながら、新たな価値観を取り入れていく。冒頭で紹介した「新結合」の概念がこれからのまちづくりを成功させるうえで重要なものとなります。

令和3年度はデジタル化を推進するとともに、制度や組織のあり方をデジタル化に合わせて変革していくための取組を強力に推進します。

現在、市民サービスの向上のため、AI(Artificial Intelligence:人工知能)で様々な質問に自動回答するシステム「チャットボット」の実証実験を行っており、令和3年度は本格的に導入します。RPA(Robotic Process Automation:定型業務の自動化)を導入し、行政実務における業務効率や生産性の向上を図ります。全ての児童生徒に配備したパソコン端末の活用や保育現場のICT化をさらに推進するとともに、次世代通信規格「5G」の活用などについても検討します。また、「新しい日常」に対応し、いかなる環境下においても必要な行政サービスが提供できるよう、全庁的にテレワークが可能な環境を整備します。

防災や福祉など様々な分野でデジタル化を推進するためには、高齢者の皆さまを中心としたデジタル・デバイド(スマートフォン等の情報通信技術を利用できる人と利用できない人との間に生じる格差)の解消が重要です。この格差の解消に向けてスマートフォンなどデジタル機器を利用していくための講習会の開催など支援策を講じていきます。

以上のような情報分野における変革を組織全体として推し進めるため、この分野に特化して統合的な調整を行う新たな部署を設置します。

私の市長としての任期は昨年12月23日で折り返しました。今任期は残り2年を切っています。令和3年度も未来に向けて持続可能な古賀市を実現していくことを念頭に、「産業力」「子ども」「健康・安心」の大きく3つの観点から、私たちの暮らしを取り巻く様々な課題を解決するため、個々の政策の実効性を高めるとともに、政策が相互に作用し合い、相乗効果で好循環をもたらすことを強く意識しながら取り組んでまいります。こうして、経済活動や定住促進を生み出す基盤づくり、誰もが生きやすい地域共生社会の構築を進め、持続可能な都市の実現につなげていきます。

市の財政状況は、超高齢社会化による社会保障関係費をはじめとした義務的経費の増加などから厳しくなりつつあり、今後、全国的な傾向である人口減少の影響を受けることにもなります。加えて、コロナ禍によって税収も減少する見込みです。私の市長就任後、古賀市は次年度の予算編成方針と併せて中期財政見通しを公表していますが、その内容からも明らかなように収支改善を強く意識しなければなりません。このため、持続可能な財政運営を意識した上で、事業の優先順位を厳に判断し、選択と集中による予算配分を行いました。あわせて、私の公約にも掲げていたクラウドファンディングに古賀市として初めて取り組みます。財政基盤を強化することはもとより、市の取組を通じてこの社会の多くの皆さまとつながり、共感の輪を広げることが、まちの持続可能性を高めることにも寄与すると考えます。また、昨年も多くの皆さまからご利用いただいたふるさと応援寄附制度について、事業者と連携して返礼品の拡充を行うとともに、ポータルサイト上の広告を新たに行うなど古賀市の特産品等を効果的に周知する取組を強化することで、寄附額の増加とともに地域産業の活性化を図ります。これらを踏まえ、市民の皆さまには古賀市の財政の現状とこれからのあり方について丁寧に説明を申し上げ、ご理解をいただく努力をしてまいります。一方、今が厳しいからこそ、私たちはその状況の打開のために挑戦を強く意識し、萎縮してはなりません。長期的な視点に立った主体的、能動的で意欲的な取組に基づく自治体経営が求められ、将来の税収の増加もめざし、やるべき事業に果敢に取り組みます。そして、予算編成に当たっては、市長公約、所信表明及び「持続可能な都市に向けた経営方針」を意識するとともに、市議会の皆さまからの提起、「対話と交流」を起点としたまちづくりのために実践している対話集会などにおける市民の皆さまからのご意見やご要望、新型コロナウイルス感染症への対応と社会の価値観の変容、財源の確保などに留意しました。

こうしたことを踏まえ、令和3年度当初予算を提案させていただきます。以下、実施をめざす主な政策・施策について、「持続可能な都市に向けた経営方針」に基づき、ご説明します。

1点目は、農・商・工の魅力を高める産業力の強化についてです。

コロナ禍の危機管理体制でも、「1丁目1番地」に位置付けるJR古賀駅東口エリアの開発は確実に進展させています。令和元年11月に最大地権者であるニビシ醤油さまと開発に向けた協力協定を締結させていただいたことを受け、令和2年度には有識者や関係事業者などで構成するJR古賀駅東口周辺地区整備基本計画策定会議をスタートさせました。令和3年度中に基盤となる道路などの都市計画決定をめざすとともに、道路や駅前広場、公園・緑地、商業・居住ゾーンの具体的な街並みを検討し、令和4年度中の用途地域と地区計画の決定に向けた準備を進めていきます。西口エリアについては、本質的な再生をめざし、宮崎県日南市の油津商店街を再生させた実績のあるプロフェッショナルの力を得て、私たち市民が主体的に関わり、ともに中心市街地のビジョンを描き、具体策を実践していく3年がかりのプロジェクトがスタートしています。令和3年度は西口の空き店舗のリノベーション、市内での創業や経営革新などの新たな事業展開を支援していきます。私は古賀市にとって今が中心市街地活性化のラストチャンスと覚悟しています。古賀駅東口の開発と西口の本質的な再生に確実に取り組み、これらが一体となって相乗効果を発揮しながら活性化につながっていくよう、事業を進めていきます。さらに、千鳥駅東口の整備に向けても事業化の準備を進めていきます。

昨年は古賀市の「地の利」を生かした産業力強化の節目の年にもなりました。九州自動車道・古賀サービスエリアの西側に広がる玄望園の土地区画整理事業が竣功し、全ての区画で入居する事業者が決まりました。福岡県はもちろん九州の重要な物流の拠点機能を担います。さらに、企業誘致は次のステップに入っていきます。今在家地区の具体的な行政手続きを始めました。令和3年4月には市街化区域に編入する決定告示がなされる予定であり、今後、工業団地の形成に取り組みます。新原高木地区などにおいても地元との調整を継続していきます。古賀グリーンパーク周辺は地産地消の拠点「コスモス館」の機能強化を図りながら、体験や見学などの「コト消費」としての観光の視点を取り入れた企業の立地を前提とした地区計画の策定を進めていきます。観光・物産・情報発信の機能を強化する観点から、「地域おこし協力隊」の制度を初めて活用します。

極めて重要な地域資源である天然温泉を有する薬王寺地区の振興を図ります。都市近郊で、温泉だけでなく、心癒される自然に囲まれた景観、水辺公園といった資源があるにもかかわらず、これらを十分に生かせていない現実を踏まえ、市内外の多くの人が訪れたくなるインセンティブの付与を意識しながら、人と人が交流できる空間の整備に着手していきます。休業した旅館をサテライトオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースなどのインキュベーション施設にリノベーションし、「温泉×新ビジネス」の拠点形成をめざしている取組は、施設工事の完了とともに運営の段階に入っていきます。コロナ禍による働き方の価値観の変容を想定し、東京一極集中の打破と地方分散型社会の形成の流れをつくるために市独自に昨年から先行して取り組んできたところ、政府が昨年12月末に同趣旨の「地方創生テレワーク交付金」を創設し、その推進を図る方針を示しました。この交付金の活用も視野に入れ、施設の充実や入居・利用企業の誘致を積極的に展開するとともに、交通アクセスの向上も検討します。あわせて、古賀駅西口の本質的再生とも連携し、相乗効果を上げていきます。薬王寺地区、特に河川内の景観を向上するための清掃を行います。また、かねてからの課題である放置竹林については、事業実施に向けた関係機関との協議を進めてまいります。水辺公園の利便性を高めるため、トイレの洋式化や手洗い器の自動水洗化の改修工事を実施し、新たな駐車場確保に向けた検討も進めます。

農業の持続可能性を高めていきます。新規就農者や経営規模拡大の希望者が確実に営農できるよう、遊休地の所有者とのマッチングを図り、優良農地の確保を支援します。クラウドファンディングを活用して女性農業者の新たな挑戦や若手農業者の先進的な取組を支援し、古賀産農産物のブランド力の向上を図ります。古賀市の強みである園芸農業における機械設備の導入支援、令和元年秋から農業基盤整備事業を進めている薦野清滝地区への支援などを継続します。

2点目は、子どもたちの育ちと学びを支えるチルドレン・ファーストです。

私たち先行世代の責務は、子どもたち孫たち、次の世代に私たちが享受しているよりも豊かな社会をつないでいくことだと確信しています。その意味で、子どもを中心にまちづくりをしていくことが大切であり、そのための取組の推進は移住定住を促し、長期的な人口の維持にも寄与します。まちづくりがこうした理念に基づいているからこそ、古賀市の新型コロナウイルス感染症対策も一定のご評価をいただけているものと考えています。

子育て支援をさらに強化します。コロナ禍の外出抑制で児童虐待のリスクが高まり、経済的困窮も深まっていることから、「子ども宅食」に取り組んでいる市内の子ども支援団体との連携により、支援が必要な子どもの家庭を訪問し、フードバンクや市内企業などからの食料を届け、見守り体制を強化します。おたふくかぜによる重症の難聴を防ぐため、現在任意接種であるおたふくかぜの予防接種に対して助成します。子どもの難聴は早期に発見されないこともあり、生育にも影響を及ぼし、おたふくかぜによる重症な難聴は現在の医療では治療できないとされます。予防が重要であり、市独自に支援します。妊娠期から出産、乳幼児期まで切れ目なくサポートするため、家事・育児支援が必要な家庭に対し、ヘルパー派遣事業を開始するとともに、不妊に悩む家庭への支援として、治療に係る費用の助成を開始します。また、「待機児童ゼロ」をめざし、保育士が働きやすい環境を整備するため、保育士の家賃補助や保育補助者の雇用への助成を拡充します。新たに、子どもが幼児教育・保育の無償化の対象となっていない施設を利用する際の費用を助成するとともに、子どもの保健の向上と福祉の増進を図るために実施している子ども医療費支給制度の助成対象に中学生の通院医療を追加するなど、さらなる経済的負担の軽減を図ります。

全ての小中学校、全ての学年における原則35人以下学級をはじめとした多様な人的配置など「教育立市こが」の施策を推進します。学校現場では昨夏までに中学3年生に学習支援ソフト入りのタブレット端末を先行配布してコロナ禍での受験に向けた不安軽減と家庭学習を支援したところですが、コロナ禍の長期化を踏まえ、中学3年生への学習支援ソフトの提供を継続します。令和2年度において小中学校全ての児童生徒へのパソコン端末の配備と全ての普通教室等への大型モニターの設置を完了しており、今後、これらの本格運用によりICT活用能力の育成を図ります。また、古賀北中学校でトイレの洋式化や多目的化を含む校舎の工事に着手し、学校施設長寿命化計画に基づく大規模改造を具体的にスタートさせます。

コロナ禍だからこそ、全ての子どもの健全な育ちを支えていくため、地域と連携する重要性も増しています。通学合宿など子どもたちの「生き抜く力」を伸ばす取組を後押しします。併せて、放課後子供教室と学童保育との連携推進や、児童館活動等の充実により、子どもたちの行き場所・居場所づくりを継続します。すべての子どもが夢と希望を持って生きていけるよう、子どもの未来応援プランに基づき、「貧困の連鎖」を断ち切るための対策を推進します。

3点目は、誰もが健康で安心して暮らしていける地域社会の実現です。

令和3年度も、あらゆる立場の人がQOL(Quality Of Life:生活の質)を向上できるまちづくりをめざし、医療・介護体制の強化や障がい者福祉の充実を図っていきます。超高齢社会化や経済的困窮の拡大などに起因して私たちの地域社会を取り巻く課題は複雑化・多様化しています。これらの課題を解決するために、福祉分野における最上位計画である地域福祉計画に則り、地域共生社会の実現に向けた重層的支援体制の整備を進めます。その取組のひとつとして、どのような相談も断らない「包括的な相談支援体制」の構築が重要であり、総合的なコーディネートを担う社会福祉士などのソーシャルワーカーの任用が重要と考え、これらを公約にしていました。令和3年度にこの体制を実現します。あわせて、現在は市直営の地域包括支援センターに基幹的な機能を持たせ、中学校区ごとに3か所を増設することで、身近な相談支援窓口を増やし、きめ細かな支援を行います。これらの取組により、高齢者のみならず、すべての市民が年齢や立場を問わず、ニーズに応じた適切な支援が受けられる地域づくりを進めます。

また、高齢者の心身の多様な課題に対応し、特性に応じた支援を行うため、保健師ら医療専門職のマネジメントにより、高齢者の疾病予防や重症化予防の保健事業と、フレイル予防や生活機能を改善する介護予防を一体的に実施します。先行実施してきた骨髄ドナー助成制度や小児がん治療などで予防接種の免疫を喪失した方への再接種の助成制度も継続します。令和3年度からの第4期障がい者基本計画に基づき、障がいがある人もない人もともに生きていけるインクルーシブな地域社会をめざします。特に近年増加している発達障がいについて、乳幼児健診や学校現場でのきめ細かな取組で早期発見や適切な支援につなげるとともに、情報発信を強化して社会の理解促進を図ります。

長年の課題である地域公共交通ネットワークの改善に本格的に着手します。古賀市は市民の皆さまの移動の利便性の確保と持続可能な公共交通体系の具体化に向け、昨年6月に地域公共交通網形成計画を策定しました。この計画の基本方針に基づき、西鉄バス古賀市内線の見直し、補完的な交通サービス導入の可能性、公共施設等連絡バス「コガバス」のあり方などを検討し、一体的な改善に繋げていきます。

地域防災・減災体制の強化を推進します。地球規模の気候変動により、昨年も豪雨や台風などによる大規模災害が多発し、新型コロナウイルス感染症への対応とあわせ、危機管理の重要性を実感させられました。古賀市も避難勧告の発令や避難所の開設・運営などを経験することとなり、今後につながる知見も得られました。そして、いつ起きるか分からない災害に備えるためには、私たち一人ひとりが防災意識を涵養し、主体的に率先して避難行動ができるようにしておかなければならないということを、誰もがあらためて痛感したと思います。とはいえ、どうしたらいいのか。そこで昨年12月、古賀市として、新たに開発されたゲーム型防災研修プログラム「風水害24」を九州で初めて活用し、防災士、社会福祉協議会、消防団、粕屋北部消防本部や古賀市の職員、市内在住外国人の皆さまが参加しました。台風の接近から通過までの24時間をシミュレーションし、時間の経過は10段階。台風が近づくにつれて警戒レベルが上がります。自分がいる場所を踏まえ、気象情報などをもとにどのように移動するか、同じ地域に住む周りの人に声をかけるか、どのように物資や情報を集めるか。行動の選択によっては命の危険性が高まることがリアルタイムで把握、実感できました。在住外国人の皆さまの参加で、日本語が通じにくい要配慮者とのコミュニケーションのあり方も再考できました。防災の肝は、公助の充実とともに自助・共助の体制の構築です。令和3年度、市内各地域での自助・共助の実効性を高めていくため、このプログラムを活用し、ファシリテーターを養成していきます。避難行動要支援者の避難支援プランを改定し、高齢者や障がい者の具体的な支援策につなげます。消防団の持続可能なあり方の検討も進めます。

昨年12月に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」において、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする2050年カーボンニュートラルの実現に向けた新しい成長戦略が示されました。古賀市においても、地球温暖化に起因する気候変動とその適応策に関する啓発など、より一層の取組を推進します。

循環型社会の形成に向けて、分別収集の充実や食品ロスの削減などの取組により4Rを推進し、ごみの減量及び資源化をさらに推進します。し尿等の適正処理を将来にわたって安定的かつ効率的に行うため、海津木苑を汚泥再生処理センターとして建て替えるための本工事をスタートさせます。なお、福津市のし尿等を含めた広域処理を行うことで、財政負担を軽減し、循環型社会の形成にさらに寄与していきます。

古賀市の犬猫の殺処分ゼロをめざし、動物愛護の推進にも取り組みます。ペットを飼うと決めたら、その一生に責任を持つ必要があります。しかし、高齢者の増加に伴い、飼い主である高齢者の死亡などによりペットが行き場を失い、突然「終生飼養」の義務を果たせなくなるケースが増えています。また、ペットの存在により高齢者が入院等をためらうケースもあります。このような、人にとってもペットにとっても不幸な事態を招かないよう、介護サービス事業所や市民ボランティアの皆さまと連携し、飼育状況の実態を把握するとともに、必要に応じ、一時預かり先や譲渡先を事前に決めておくなど日頃の備えに対するサポートを開始します。また、すでに先駆的に取り組んでいる「地域猫活動」について、クラウドファンディングにより資金を募り、財源の確保を図るとともに、現在行っている不妊去勢手術費用の助成に加え、新たに譲渡検査等の費用を助成対象に追加するなど、不幸な猫を減らすための取組を推進します。

市が行っている多くの環境教育活動の充実を図りながら、市民、団体、学校関係者や事業者など、さまざまな主体を環境教育を行う担い手として育成するとともに、人の環、活動の場を広げることを目的に「古賀市環境人材バンク」制度の運用を開始します。
今年に延期された東京オリンピック・パラリンピックの機運醸成に取り組みます。古賀市ゆかりのトップアスリートを応援するとともに、ルーマニアのホストタウンとして柔道チームを支援します。J1に昇格したアビスパ福岡のフレンドリータウンとして活動し、スポーツを地域振興に生かしていきます。古賀の歴史や風土、文化、まちづくりの現在への理解を深めていただけるよう、郷土読本を作成してアナログとデジタル双方の形で市民の皆さまに届けるとともに、学校教育の現場で子どもたちの郷土愛を醸成する副読本として活用していきます。古賀市ゆかりの戦国武将である薦野増時や米多比鎮久が仕えた「立花宗茂と誾千代」のNHK大河ドラマを実現するため、柳川市を中心とした招致委員会のメンバーとして取り組んでいきます。

そして、市民生活を支える基盤となる様々な取組を推進していきます。

西鉄宮地岳線跡地の整備を推進します。これまで沿線の各地域における対話集会を開催してきており、道路と遊歩道などを備えた空間を創出する方向性で中川区と花見南区について詳細設計に着手しました。これを着実に進め、整備工事につなげるとともに、引き続きそのほかの地域についても結論を得られるよう、合意形成に努めていきます。令和3年度中に浜大塚線の工事を完了させ、花見佐谷線の道路拡幅に向けた手続きを始めます。通学路の安全を確保するため、「ゾーン30」の設定やハンプの設置に向けた地元との調整を進めます。

近年、令和2年7月豪雨に代表される記録的な大雨など、市民の生活を脅かす気象状況が多発しており、雨水への対策が急務となっていることから、雨水に係る総合的な計画の策定に着手します。また、水道水の利用促進や防災等の推進のための啓発を行います。

グローバル化の急速な進展に伴い、古賀市でも当たり前に様々な国籍や民族、文化の異なる方々が共存する環境になっています。そこで、令和2年度に新たに国際交流・多文化共生係を設置し、庁内の体制を強化しました。生活密着型の日本語教室を開催してきた実績をもとに、「やさしい日本語」を伝える場づくりなどに取り組みます。また、福岡県内に在外公館を設置している国・地域を中心に交流を深めていきます。

人権を重んじ、平和を希求する取組を推進します。令和2年度から性的マイノリティや事実婚関係にある人たちの生き方を後押しするためのパートナーシップ宣誓制度をスタートさせたことを踏まえ、全庁的に性自認や性的指向の多様性について市民の皆さまとともに理解を深める施策を展開します。新型コロナウイルスの感染者や医療従事者への差別や偏見を許さないシトラスリボン運動を継続するとともに、部落差別をはじめあらゆる差別を許さない姿勢を堅持し、人権施策基本指針に基づいた施策を推進していきます。平和首長会議や日本非核宣言自治体協議会のメンバーとして、核兵器廃絶と世界平和に向けて取り組みます。名誉市民である中村哲氏のご功績と志を受け継ぎ、市民の皆さまと一緒に顕彰のあり方を検討します。

古賀市を広く知ってもらえることは、古賀市の持続可能性を高めます。このまちに住みたい、このまちに働く拠点を置きたいと考えてもらうためには、まずは広く認知してもらい、選択肢に入ることが必要です。古賀市は多くの魅力や潜在力があるものの、全国的な知名度は高くないことをあらためて認識し、シティプロモーションを強化します。具体的には、SNSの中でも訴求力の高いYouTubeの古賀市公式チャンネルを開設し、「暮らす・働く・グルメ・余暇・移住」などのカテゴリーを軸に古賀市の魅力を発信します。また、九州朝日放送(KBC)のデータ放送を活用し、テレビのリモコンのdボタンを押すだけで手軽に市政情報にアクセスできる仕組みを作ります。平時から市民の皆さまに市政の取組を伝えるとともに、特に迅速な共有が求められる災害発生時の緊急情報の発信に活用し、デジタル・デバイドが指摘される高齢者の支援にも繋げます。

令和4年度から10年間のまちづくりの指針となる第5次総合計画の策定作業は令和3年度が最終年度になります。これまで、市内の全ての地域を私自身の目で見、市民の皆さまと直接対話をさせていただき、子どもたちの声もしっかりと聴きました。その思いを反映させます。第4次総合振興計画の評価と分析の結果も踏まえ、有識者や様々な年代の市民の皆さまに入っていただいた基本構想審議会や市議会でのご議論を経て、完成させます。なお、第4次計画の最終年度となるため、計画に掲げた政策の実現に向け、関連する施策・事業を展開することを強く意識するとともに、第5次計画における2層構造、特に毎年度ローリング方式で見直すこととしているアクションプランを意識し、行政の継続性を担保した計画の円滑な移行を図ります。

また、市民の皆さま一人ひとりが市政に当事者意識を持ち、地域課題に対する認識を共有し、話し合っていけるよう「予算編成の見える化」に取り組むとともに、持続可能な地域社会の構築をめざすため、SDGsの視点を取り入れたまちづくりを引き続き推進していきます。

古賀市には昨年の秋、ビッグニュースが飛び込んできました。国史跡・船原古墳から出土した金銅製の杏葉が、国内で初めて、玉虫装飾の馬具と確認されました。新型コロナウイルス感染症との対峙が続く中での「国宝級」発見の吉報。明るく照り輝く古代古賀の地を、高貴な人物の乗る馬が腰元の馬具をきらめかせながら颯爽と歩く。私はそんな情景を想起し、古賀市の未来に向けた一筋の光明を見た思いでした。

子どもたち孫たち、次の世代の明るい未来を切り拓いていくため、私たち一人ひとりの力をあわせ、「オール古賀」で前に進んでいきたい。そうした思いを込め、令和3年度の施政方針を策定いたしました。

   ◇

市政運営の理念や重点的な取組をまとめた「1.はじめに」は以上になります。これでも施政方針演説全体の半分超。演説は以下に記載の構成となっており、残りの「2.令和3年度予算編成について」以降については、公開したPDFデータ(こちら)をご参照ください。

1.はじめに
2.令和3年度予算編成について
3.令和3年度に行う主な事業について
Ⅰ 農・商・工の魅力を高める産業力の強化
Ⅱ 子どもたちの育ちと学びを支える「チルドレン・ファースト」
Ⅲ 誰もが健康で安心して暮らしていける地域社会の実現
Ⅳ 市民生活を支える基盤の整備
4.おわりに

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