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市長室ブログ

施政方針演説2026―「未来への懸け橋」に(2月26日)

2026(令和8)年度の施政方針演説を行いました。


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私の市長8年目、2期目の最終年度の演説です。「未来への懸け橋」を強く意識し、まちづくりの理念と実践、2026年度の当初予算などを説明しています。なお、毎回、「はじめに」や「おわりに」は世界の知見から理念を強く打ち出しています。

ぜひご一読ください。


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<目次>
1.はじめに
2.風土・文化・歴史・伝統を礎に―市制施行30周年に向けて
3.都市と自然の調和による持続可能性の向上
4.チルドレン・ファーストの徹底
5.誰もが自分らしく生きられる地域共生社会
6.恒久平和希求と人権保障の徹底
7.DXの推進
8.組織経営と多様な生き方を保障する働き方改革
9.おわりに


1.はじめに

 「時間というのは、もともと無限にあるものです。その中の一瞬に過ぎない人生を生きている我々にとって、自分よりもはるかに長い年月を生きる他の中に自分を見るということ。また、それによって、永遠に続いていくものに心で連なっていくということ。それはとても豊かなことであるように思えます。心の時間は、一人ひとりに与えられているものです」

 福岡県出身で彫刻家としてスペイン・バルセロナの大聖堂「サグラダ・ファミリア」の建築に携わる外尾悦郎さんは著書「ガウディの伝言」の中でこう記しています。現世に生きる私一人の存在はちっぽけなものだけども、空間的にも時間的にもこの世界を構成する一つの何かであり、そのことを自覚して生きることが、人間の幸せにつながる。漫画家の手塚治虫(1928-1989)が不朽の名作「火の鳥」で提示した世界観とも重なります。

 今年は、サグラダ・ファミリアを構想した建築家のアントニオ・ガウディ(1852-1926)の没後100年。そして、1882年に着工しながら140年以上も建設が続く「未完の大聖堂」の主塔「イエス・キリストの塔」が完成する年です。外尾さんはこうも綴ります。

 「サグラダ・ファミリアのような場所で彫刻家として仕事をしていると、どうしても、人間の幸せとは何だろうということを考えざるを得ないんですが、それは一つには、どれだけ何かを愛し、その自分でないもののために生きられているかということではないかと思います。自分というのは、他があって初めて存在するものです」

 「他のために生き、それによって自分も満たされるということ。そういう関係性の中にこそ、人間が求めるべき幸せがあるような気がします」

 私たちが生きるこの社会の現実を直視し、再考したい。戦争、分断、差別、憎悪、気候変動、災害、感染症、技術革新、エトセトラ。私が詳述するまでもなく、不確実性が高まり、不安が拡大し、短期主義的傾向が強まり、持続可能性が阻害されています。ガウディと外尾さんの言葉から「長期思考」と「利他主義」に立ち戻りたい。私たち先行世代が、グッド・アンセスター、よき祖先になれるか。私たちが享受しているよりもよき社会を、子どもたちや孫たち、さらにはその先の世代につないでいくことができるか。

 「未来への責任」を果たすため、まちづくりを進める決意を新たにします。

2.風土・文化・歴史・伝統を礎に―市制施行30周年に向けて

 古賀市は令和9(2027)年度に市制施行30周年の重要な節目を迎えます。古賀の先人が私たちにつないできてくれた風土、文化、歴史、伝統を礎として、50周年、100周年といった将来も意識し、「オール古賀」の理念のもと、市民の皆さまと共に具体的な営みを始めていきます。

 昭和30(1955)年、旧古賀町、旧青柳村、旧小野村が合併して古賀町が誕生し、現在の市域となりました。旧町村それぞれのエリアには、風土、文化、歴史、伝統を培ってきた暮らし、働く人びとやお店などの多くの地域資源があります。ところが「当たり前」過ぎてその価値に気付いていないこともありそうです。これらを磨くことでその特性をさらに引き出し、市全体の魅力を高めていきたい。令和8年度の小野地区を皮切りに、市民の皆さまと共に地域資源を掘り起こし、活用の可能性を探り、活性化を促します。

 これまでの営みを次世代に継承していくため、令和9年に刊行予定の「古賀市うるわし2(仮称)」の編集作業を進めます。市史編さんの基礎となる古文書などを収集、整理してきたことで、収蔵庫は手狭な状況となっており、国史跡船原古墳の遺物の適切な保存・管理も見据え、既存施設の有効活用を検討します。

 古賀町が全国優良自治体として表彰されたことを記念して始まった駅伝競走大会は、過去と未来、地域と地域、人と人を「たすき」に託してつないできました。コミュニティが育む絆は社会が活性化する原点です。地縁組織の持続可能性を高めるため、全自治会を対象とした「自治会カルテ」の分析結果を基に支援を強化します。特に、自治会未加入者の増加によって生じる不公平感の是正について有識者を交えて検討します。公民館類似施設の環境整備の支援を拡充します。自治会が維持管理する防犯灯は、その公共性の高さ、経費の実情を踏まえ、自治会統合型交付金を増額します。防犯灯の倒壊により生じる賠償責任保険に市が加入し、自治会のリスクを軽減します。消防車両の運転に必要な準中型免許取得の公費助成を行うなど消防団の機能強化を図ります。

 郷土の偉人の志と功績を次代につなぐ取組は、シビックプライドを育みます。名誉市民・中村哲さんの生き方を伝える古賀西小児童による絵本作りを平和首長会議で報告したところ大きな反響がありました。その中村哲さんを巻頭で特集したのが「広報こがまち」最終号です。

 「古賀町は、今もいいところですが、昔もいいところでしたよ。海は近くて、自然も豊富で。小学1年生の夏から20代の後半まで住んでいたんですが、筵内から清滝、犬鳴山系、西山まで行って遊んでましたね。昆虫採集が好きでしたから。古賀郵便局の吉川さんという局長が、よく(昆虫採集に)連れてってくれたのを覚えています」

 時を越えて、中村哲さんと同じまちに生きているという実感。これからも中村哲さんの理念と実践を平和教育、ワークショップやパネル展示などのイベント開催を通じて広めていかなければなりません。

 日本の特撮界における井上泰幸さんの存在の大きさも、映画「空の大怪獣ラドン」に登場する岩田屋のミニチュアセットの展示など近年のイベントを通じて実感しています。くしくも今年は「ウルトラマン」誕生60周年。その先駆けとなる「ウルトラQ」で初回の「ゴメスを倒せ!」などの特撮美術を手掛けたのも井上泰幸さんです。ものづくりのまちとして、子どもたちが井上泰幸さんの仕事に学び、創意工夫する楽しさを体感できるよう、ミニチュアづくりの体験講座を開催します。ふるさと納税の仕組みによるガバメントクラウドファンディングを活用し、市内外の方の応援を得ながら進めます。元市立歴史資料館長の石井忠さんが収集した海岸漂着物の保存と活用を進めることで、世界的な気候変動の影響を受ける海の実情を捉え、海岸保全などの環境行政の推進につなげていきます。

 記念式典や各種イベントの具体的な企画・立案を進めます。宇宙という最先端のフィールドと地域の産業力を横断的に体験し、自らの視点で未来の姿を探求・発信する「みらい特派員事業」を実施します。宇宙食開発に挑戦する企業と連携し、企業の取組や開発プロセスの体験、筑波宇宙センター訪問を実施します。30周年の象徴となるロゴマークの制作をはじめとする市民参加型のプレイベントを展開し、期待感と祝祭感を高めていきます。

 人口減少、縮退社会に入る中、市制施行30周年という節目を一過性のものとするのではなく、市民の皆さまと共にまちづくりの本質に迫っていきたいと思います。

3.都市と自然の調和による持続可能性の向上

 人口と税収の維持・拡大でまちの持続可能性を高めるため、公約に掲げた産業力の強化と雇用機会の創出、移住・定住の促進、関係人口の拡大に向けた具体的な取組を進めてきました。

 特に、「1丁目1番地」に位置付けるJR古賀駅周辺開発による中心市街地活性化は新たなフェーズに入ります。

 古賀駅東口エリアでは、古賀駅五楽線などの都市計画道路の詳細設計に着手します。その設計に基づき、3D 都市モデルを活用して将来のまちの姿を再現、公表し、具体的に理解を深めてもらえるようにします。ウォーカブルな空間形成のシンボルとなる公園機能の都市計画の決定や、工業から住居・商業への土地利用の転換を図るための用途地域の見直しにも着手し、令和9年度までに用地交渉や造成工事などの事業実施の前提となる手続きを完了できるよう取り組みます。こうしたハード整備はリーパスプラザこがのリニューアルと連動することで相乗効果を発揮できるものであり、駐車場再整備とあわせ、具体化に向けた検討、調整を加速します。

 西口エリアでは、商工会と共に検討してきた商工会館とこれに隣接する憩いの広場の一体的なリニューアルに着手します。商工会館が商工業者の相談支援機能の充実にとどまらずコワーキングスペースやカフェを備え、憩いの広場の機能性も高めることで、広く市民の皆さまのビジネスや交流の共創拠点に生まれ変わります。駅前広場はこれまで取り組んできた社会実験の結果を整理して都市計画を変更し、さらなる社会実験で新たな事業の可能性を見出し、担い手の発掘もめざします。これらを市内各地の地域資源とつなげることで市内外からの誘客を促進し、中心市街地にとどまらない市全域への回遊性も高めていきます。

 企業誘致の加速と居住機能の強化のため、市内6地区で進めている工業・物流団地、住宅地を形成する都市開発を着実に進めます。既に整備が進む4地区に加え、青柳迎田地区の令和8年度末までの都市計画決定をめざし、古賀中学校周辺の新久保南地区も早期決定に向けた調整を進めます。さらに産業力を強化すべく、九州自動車道古賀インターチェンジ南側に位置する川原於宮町地区で工業・商業系を軸とした新たな土地利用計画の検討を開始します。今在家地区や青柳迎田地区の周辺整備の一環として、京田馬渡線の詳細設計や新迎田橋(仮称)の予備設計を実施します。

 都市と自然の調和も重要です。農業の保全と生産性向上を図るため、薦野清滝地区の農業基盤整備を着実に進めると共に、基盤整備エリアの拡大を検討します。リモコン草刈り機、水田水位センサー、営農アプリなどのデジタル技術を活用したスマート農業のシェアリングや、脱炭素技術を活用した農業用設備や機器の効果検証で、農業者の所得向上をめざします。森林環境譲与税を活用した放置竹林対策に着手し、公民連携による竹林整備を支援します。人口減少や耕作放棄地の増加、防災・環境・水循環への関心の高まりなど農業を取り巻く環境の変化を踏まえ、農林業土木施設の役割を再評価し、その公共性について整理を進めます。

 公民連携による地域脱炭素の先導役となる「地域エネルギー会社」を設立します。この会社は、地域のエネルギー利用の最適化を通じて、域外へ流出していた資金を地域内に留める地域経済循環の中核を担います。エネルギーの供給にとどまらず、事業を通じて得られた収益について、地元企業の皆さまと構築したプラットフォーム「脱炭素ブリッジこが」の運営に充てるなど脱炭素経営支援や地域課題の解決に還元します。

 「観光・運動・ワンヘルス」を基軸に置いた公園再整備基本方針に基づき、市内8公園の再整備を計画的に進めます。古賀グリーンパークは周辺環境の変化も捉えた一体的な整備を視野に、地産地消の拠点「コスモス館」の機能強化や駐車場整備を検討します。パーク北側「市民の森」で生育した樹林を適正に管理し、市民が森林に親しむ機会を拡大する展示林を整備します。千鳥ヶ池公園への市民体育館移転に向けた検討を進めます。これに伴い、縮小する多目的広場の機能を担保するため、小野公園の多目的広場に夜間照明設備を設置し、利便性向上を図ります。

 道路ネットワークもさらに強化します。西鉄宮地岳線跡地は、各地域の皆さまの声も聴かせていただきながら、通学する子どもたちをはじめ歩行者の安全を確保するための道路整備方針を決断し、中川区、古賀南区、花見南区で工事を進めてきました。花見東エリアの工事に着手し、各所で憩いの空間も整備していきます。古賀北区も通学路の安全対策を求める声が強く寄せられており、早期の整備方針決定をめざします。長年の懸案だった国道495号から西側の花見佐谷線(花見工区)は用地交渉を順次進めており、西鉄跡地との円滑な接続をめざし、計画的に整備を進めます。高校生リバースメンターから政策提言のあった千鳥駅東口から玄界高校に向かう花見佐谷線(千鳥工区)整備についても、歩行者や自転車の安全確保のための道路改良工事を始めます。

 水道供給基盤の安定強化と高い有収率を維持し、管路の経年化率を低減させるための管路更新を推進します。災害時でも給水を継続できるよう、施設の耐震化計画を策定します。頻発する集中豪雨の浸水被害の軽減を図るため、雨水管渠や排水施設の整備改修工事を進め、雨水施設設置に関する調査を実施します。古賀水再生センターは供用開始から47年が経過し、施設の老朽化が進んでおり、再構築を検討します。上下水道事業の経営安定化のため、上下水道料金の定期的な検証を行います。併せて中長期的な視点で経営戦略を見直します。

 持続可能なまちづくりには、こうした産業力の強化やインフラ整備とあわせ、誰もが自分らしく働き続けられる、住み続けられるようにするための「雇用と定住の好循環」を生み出すことが必要です。ターゲットは、若者や子育て世代。学生が市内企業で働く魅力を体験するインターンシップ、子育て中の女性などが時間や場所にとらわれず地域で柔軟に働き続けられるための就労マッチングやスキル習得支援、合同会社説明会を開催します。ターゲットを明確化にした移住定住の促進策により、市民生活を支えるうえで欠かせない保育士や介護士などの担い手確保に注力して支援します。

 さらに、社会の価値観が多様化する現代にあっては、定住人口の確保のみならず、地域と様々な形で関わる「関係人口」の創出が求められます。新たな働き方と生き方を追求する「快生館」の営みで得られた知見や様々な主体とのネットワークを生かし、国内外の人材が本市と継続的な関わりを持つ多拠点ライフ・二地域居住を新たなライフスタイルとして推進することで、人材の交差を生み出します。近年、観光協会と共に取り組んでいる観光・物産・情報発信機能の強化と誘客促進の実効性を高めるため、生成AIを活用した無人観光案内所の設置をめざします。

 企業版ふるさと納税は、本市に共感する企業の社会貢献意欲をその推進力に結び付ける公民連携の仕組みです。民間の副業人材の知見を得ながら寄附獲得に努めます。

4.チルドレン・ファーストの徹底

 誰もが子どもを安心して産み育てられる包摂的な地域社会でありたい。そう考え、チルドレン・ファーストを公約に掲げ、18歳までの子ども医療費無償化や「こがたからばこ」に象徴される妊娠・出産・乳幼児期の切れ目ない伴走型支援などの具体的な事業を拡大してきました。

 双子や三つ子など多胎児家庭支援を強化するため、当事者である多胎経験者がピアサポーターとして助言する体制を構築すると共に、多胎児家庭同士が交流できる「場」をつくります。産後1カ月児の健康診査を実施し、疾病などの早期発見、適切な指導で乳児の健康の保持・増進を図るなど、産前・産後支援のさらなる拡充を図ります。5歳児健診を試行的に実施し、発達や行動面、生活習慣や就学に向けた課題を早期に把握し必要な支援につなげます。

 年度当初の待機児童ゼロと質の高い保育サービスの提供を実現するため、保育士の安定的な人材確保のための運営法人などへの財政支援を強化します。保育現場にデジタル技術を積極的に導入し、保育士などの業務負担を軽減すると共に、専門性を発揮できる魅力的な職場環境づくりにつなげます。多子世帯の経済的支援のため、第3子以降保育料無償化の範囲を拡大します。「こども誰でも通園制度」を本格的に実施し、国基準の倍の時間を保障します。これらの支援策の充実のため、新たに医療保険の保険税などに「子ども・子育て支援納付金分」が追加されたことから、国民健康保険税を改定します。

 教育環境のさらなる充実を図ります。平成28年度から取り組んでいる小中学校全学年の原則35人以下学級を継続します。児童生徒一人一台端末の利用を促進し、デジタル教材やオンライン学習を定着させます。教育DXの推進に精通した「未来共創フェロー」と共に、教員の指導力を高め、個別最適な学びを支える指導体制を充実させます。不登校児童生徒や特別な支援を要する児童生徒への支援体制を強化し、全校設置の校内教育支援センターに専任教員の配置を始めます。通級指導教室の自校方式の体制を強化し、インクルーシブ教育を充実させます。各学校で管理していた備品や消耗品を、学校を越えて共有、活用します。小中学校体育館・武道場への空調設置を計画的に進め、令和8年度は青柳小、古賀東小、古賀中、古賀北中、古賀市武道館で工事を実施します。花見小でトイレを洋式化・乾式化し、「みんなのトイレ」も整備します。これらは避難所機能の強化にもつながります。古賀中のエレベーター設置の実施設計を行います。花鶴小校区で「ゾーン30プラス」の区域を指定し、最高時速30キロ規制や路面標示による整備を実施します。

 小学校の給食を無償化します。国による給食費の抜本的負担軽減の財源だけではこれまでの給食の質を担保できないところでしたが、財源に市費を加え、質を保ったうえで無償化を実現します。中学校の給食費は物価高騰分の食材費補助を継続します。地元農産物の利用拡大で地産地消を推進します。給食費の徴収業務を効率化するため、収納システムを稼働します。

 中学校の運動部・文化部活動の持続可能性を高めるため、部活動地域展開コーディネーターの配置、地域のスポーツ指導者や文化活動の専門家との連携で、部活動を学校ではなく、地域全体で支える新しい形へ変化させます。新設された地域クラブの休日の活動を財政支援します。経済的に部活動や地域クラブへの参加が困難な世帯に経費の一部を補助します。

 各学校を応援してくれる地域・保護者の人材バンクをつくり、地域人材のシェアを推進します。子どもに関わる大人のための講座を開催し、プレイパークをはじめ子どもの居場所づくりを支援します。これらPTCAや子ども会育成会、子ども支援団体などの人材の育成や発掘、活動者間のネットワークづくりによって地域社会の絆を強化します。特に若い世代にアプローチします。

 高校生が将来の夢に向かって自身の経験やスキルを高めることを支援します。高校生リバースメンターによる提言とその後の高校生への伴走と対話から、実用英語技能検定(英検)の検定料の一部を補助します。

 文化協会と連携して芸術文化の祭典、童謡まつり、サロンコンサートなど、市民参加型の芸術文化活動の充実を図ります。特に童謡まつり独唱コンクール参加応募の拡大に向けて、小中学校の音楽の授業と連動させ、わが国で親しまれてきた唱歌や童謡、わらべ歌などを、子どもからお年寄りまで世代を超えて共有できるように支援します。

 スポーツ協会との連携で、市民健康スポーツの日、親子スポーツ教室など、ジュニアスポーツの育成とシニアの健康増進を支援していきます。新設予定の市民体育館は、スポーツ協会加盟団体や利用者などの意見を整理し、基本設計につなげます。

5.誰もが自分らしく生きられる地域共生社会

 「ひきこもりの人は社会に出られない、出たくないとは違う。変わりたい、でもどうしたらいいのかわからないという状況であり、ひきこもりという生き方があることを理解してほしい」

 石川県加賀市で昨年11月に開催された地域共生社会推進全国サミットでの当事者だった男性の言葉です。この本質を理解し、それぞれに合った支援につなげていきたい。障がい者やひきこもり状態にある人、難病患者、がん患者、生活困窮者などさまざまな就労困難者への支援は、一人ひとりが自分らしく生きられるインクルーシブな社会を実現するために不可欠です。とりわけ、ひきこもり状態にある人については実態を丁寧に把握し、必要とされる支援を的確につなげていくことが重要であり、初の実態調査を行い、検討を進めます。併せて、デジタル技術を活用した多様な就労の場や社会参加、自立ができる環境づくりを探ります。

 障がいの有無に関わらずすべての人が尊重され、安心して暮らすことができる地域共生社会の実現に向けて、多様な意思疎通手段の利用促進と相互理解の促進に関する条例を制定します。障がい福祉の中核的な相談支援拠点となる基幹相談支援センターを設置し、当事者や家族が抱える様々な困りごとに寄り添う体制を強化します。テレビ電話を使い、手話通訳者を介して通話先とやりとりできる「手話リンク」を導入します。

 誰もがいつか当事者になりうる認知症。だからこそ、私たちが社会の中心に据えるべき言葉があります。それは、「尊厳」と「その人らしさ」。認知症になっても、全てが分からなくなる訳でも、全てができなくなる訳でもありません。できることやできるようになることだってたくさんあります。「自分で選び、自分で決め、自分の役割を持って生きたい」。認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、当事者本人や家族の声を政策につなげ、寄り添い、その人が「できること」をサポートする支援体制の充実をめざし、認知症基本法に基づく「新しい認知症観」を広げ、人材育成、地域包括支援センターや医療機関との連携強化、認知症カフェの開設拡大などに取り組みます。認知症のリスク因子とされる視力・聴力低下の早期発見につなげるため、特定健診等を受診する65歳以上の市民の視力・聴力検査について費用を市が負担します。

 高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を送れるよう、地域包括ケアシステムを深化させます。今年で6年目となる地域包括支援センターは、高齢者支援の中核として相談支援、権利擁護、介護予防の推進など多岐にわたる役割を担っており、これまでの実績を踏まえながら、医療・介護・福祉・地域住民との連携を一層強化します。介護保険業務におけるICTの活用を検討します。頼れる親族がいない高齢者などの入院・入所等の手続きや死後事務の支援を行うため、新たな権利擁護事業に取り組みます。社会福祉センター千鳥苑の機能移転について、福祉サービスの維持を前提として、引き続き具体的な方策の整理を進めます。

 全世代型の健康づくりを推進するため、産学官連携の「古賀式 私の朝プロジェクト」を継続します。子どもの成長期における骨づくりが生涯の基礎となることに着目し、全ての小中学校で食生活など基本的習慣の日々の確認や骨密度測定などを通じた気づきを促し、生活習慣病の予防につなげます。

 移動する権利を保障するため、近年、地域公共交通ネットワークの強化を加速してきました。公共施設等連絡バス「コガバス」の市町境を越えてシェアした新宮中央駅への乗り入れは、通勤や通学、通院、買い物はもとより、駅周辺の商業施設に子どもたちが遊びに行く際に家族の送迎なく移動できるようになるなど、幅広い移動機会の創出につながっています。高校生の利用も多く、地域の大人たちが「子どもたちが乗れないことがないように」とあえて利用時間帯をずらすこともあり、公共交通を通じて、地域全体が支え合う姿も見られます。公共交通で重要なのは利用者もその責任主体であると意識することとされますが、路線開設に当たり、小竹区の皆さまと2年にわたる対話を続けたことが奏功したと実感します。これからも基本姿勢を堅持し、西鉄バス古賀市内線やコガバス、AIオンデマンドバス「のるーと古賀」、タクシーの維持に努めながら、新たな交通モードである自動運転バスの実証運行を継続、運行区域を拡大し、社会実装をめざします。また、利便性向上のため、市内公共交通を乗り継いで使用できるデジタル定期券や回数券といったキャッシュレスチケットを導入します。

 令和7年8月豪雨では本市も大きな被害を受けました。近年の災害の激甚化に適応するため、自助と共助を支える公助を強化します。防災体制を見直すと共に、先に述べた道路や上下水道などのインフラ整備を進めます。Webアプリケーションを活用して被害状況を一元管理し、リアルタイムで確認できるシステムを構築します。国や県の計画改定などを踏まえ、地域防災計画や地震ハザードマップを見直します。

 物価の高騰が続き、特に子育て世帯や経済的に厳しいご家庭の暮らし、中小事業者の経営、地域経済の循環などに影響していることから、国の動きも捉えて対策を講じます。

6.恒久平和希求と人権保障の徹底

 人権保障は政治と行政の最も重要な責務です。昨今の差別主義や排外的風潮の拡大に強い憤りと危機感を覚えています。長年、市民の皆さまと共に「いのち輝くまち☆こが」を掲げ、部落差別をはじめあらゆる差別を許さず、誰もが生きやすい社会をめざしている古賀市として、まちづくりのあらゆる分野で人権保障を徹底する決意を新たにします。

 戦争は最大の人権侵害です。先の大戦から80年を経て戦争体験者が急速に少なくなっている今、世界で暴力が吹き荒れ、特に大国の指導者が戦争や軍事力による恫喝と実力行使を正当化する現実に慄然とします。核兵器の使用を示唆する言動に至っては、唯一の戦争被爆国として決して容認してはならないし、平和首長会議と日本非核宣言自治体協議会に加盟する古賀市としてこうした振る舞いを断固非難するものです。「人間の死」「人間が人間を殺すこと」「人間が人間の尊厳を奪うこと」に対する想像性が欠如していると言わざるを得ません。

 だからこそ、次世代と共に考え、行動することが求められます。古賀市は被爆クスノキを全ての小中学校、市役所、教育支援センター「あすなろ教室」に植樹しています。市独自の人権教育副読本「いのちのノート」に被爆クスノキを題材として取り入れており、平和の大切さを未来へつなぐ心を継承・充実させています。修学旅行での長崎や広島、鹿児島の訪問、「じんけん平和教室」の長崎でのフィールドワークなども通じ、恒久平和と核兵器なき世界をめざします。

 人権教育・啓発の拠点である汚泥再生処理センター「海津木苑」で環境と人権をテーマとした情報発信を強化します。

 ジェンダー平等で男女が共に能力を発揮でき、LGBTQをはじめとする性的マイノリティの皆さまも生きやすい社会をめざします。家事や育児を特別なことではなく日常の営みとして捉えるきっかけとなる写真展の開催や小中学校での当事者講師による授業、高校生の声を反映した啓発物の作成・配布などで実効性を高めます。外国籍の市民の方々は年々増加しており、多文化共生の推進は重要です。交流型日本語教室をはじめ地域の中で日本人と外国籍の皆さまが交流できる場を広げていきます。市民や事業所を対象に多文化共生に関するアンケートを実施し、取組の充実・強化を図ります。各国・地域の在福岡の総領事館などを通じた国際交流を推進します。

7.DXの推進

 デジタル技術の実装を変革、革新につなげること。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の意義はここにあります。単に個々の営みのデジタル化を図るだけではDXとは言えません。行政経営では、市民サービス向上という変革を起こすことが求められます。だからこそ、古賀市は「dXビジョン」と「d」を小文字、「X」を大文字で表現し、変革こそめざすべきものであるとの理念を明確にしています。

 住民票などの証明書のコンビニ交付や公開型地理情報システム(GIS)、LINE機能の拡充といった実務におけるデジタル技術の導入で、市役所への来庁者が減少するという現象を起こし得たからこそ、窓口時間の短縮で職員のクリエイティブな働き方を実現し、新たな政策形成による市民サービス向上を図るという変革につなげられています。本市が全国から注目されている理由はDXの具現化にあります。

 こうした基本姿勢で主体的、能動的、積極的にDXを推進します。新たに「対話型AI意見集約システム」の実証実験に挑みます。市民の潜在的なニーズを拾い上げるため、生成AIを活用して対話型で意見を聴き取り、大学の専門的知見と連携し、AIが市民一人ひとりと対話を重ねます。これにより、意見の奥にある背景や課題を認識し、より納得感の高い政策立案につなげます。

 窓口改善調査を実施し、市民の皆さまがより利用しやすい窓口づくりにつなげます。DXの推進で来庁せずに行える手続きは増えていますが、複数の届出用紙に何度も住所や氏名を記入しなければならない手続きなどがなお残っています。こうした課題を把握し、実効性のある改善につなげるため、公募した市民の皆さまに実際に窓口を体験してもらい、率直な意見を伺うことで、わかりにくさや不便さを洗い出します。

 古賀市版生成AIを本格運用します。実証実験で文章の確認や修正、会議内容の文字起こし、簡易なプログラム作成などで大きな効果が得られることが確認できました。これらの成果を踏まえ、会議録や法令、業務に関する規定などを参照しながら、正確な情報に基づいた回答や要点整理が行えるよう、検索や要約の機能を強化します。地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、住民情報システムなどの基幹システムについて標準化版システムに移行します。

8.組織経営と多様な生き方を保障する働き方改革

 快く働き、快く生きる。多様な生き方を保障する働き方改革は、今を生きる私たちの市民サービス向上はもちろん、生産年齢人口が減少の一途をたどり、とりわけ公務員が志望されなくなる中で、優秀な人材獲得により将来の良質な市民サービス提供を担保するために必須の営みです。この観点から、職員のウェルビーイングを高める健康経営を推進し、働く現場における業務効率化と生産性向上、政策立案機能の強化をさらに実効性あるものとしていきたい。

 公民連携によるプロフェッショナル副業人材の活用に乗り出します。民間の第一線で活躍する人材との共創により、外部の柔軟な発想やスピードを自治体経営に直接取り込み、政策立案と実行の質と速度を高め、具体的な課題解決を加速させます。併せて、職員にとっても新たな視点や刺激を得られる機会とし、組織全体の活性化と意識変革につなげます。

 子どもを取り巻く環境が大きく変化する中、登校などに困難な事情を抱える家庭への社会的な支援が求められており、保護者が子育てを原因にキャリアを断念することなく安心して職務に専念できる職場づくりは、行政自らが率先して取り組むべき重要な課題と考えます。このため、義務教育終了までの新たな特別休暇として「子どもサポート休暇」を創設します。テレワーク、時差出勤、フリーアドレスデスク、リモート会議、ペーパーレス、男性育休取得率100%、カスタマーハラスメント対策などを今後も展開すると共に、国や県の機関・民間企業との人事交流や派遣にも取り組みます。

 行政ニーズの高度化・多様化に的確に対応するためには、組織体制の不断の見直しと、重点分野の機能強化が不可欠です。公共施設管理部門と危機管理部門で専門性と機動力を高める組織改編を実施します。管理・監督職の職員体制も見直し、全庁的な課題への迅速、的確な対応を図っていきます。職員自らが地域の一員として暮らし、市民生活の実情を肌で感じながら行政運営に携わることも重要です。給与制度によるインセンティブを設けることで職員の市内居住を促進します。社会経済情勢の変化を踏まえ特別職報酬等審議会を開催し、必要な見直しを行います。

 公有財産の有効活用や脱炭素推進のため、公用車が使われていない時に市民や来訪者の皆さまが利用できるよう公用車EVカーシェアリング事業に着手します。

9.おわりに

 連日、AIをめぐる報道に接しない日はありません。世界各国の国家レベルの選挙におけるSNSでの世論操作も人間主導から自律型に「進化」しているとされます。民主主義は脅かされているのか、いや既に破壊されているのか。技術革新が急速に進む現代にあって、私たちは「生物としての人間」の重要性もまた急速に増しているということを認識しておかなければなりません。劇作家・演出家・役者の野田秀樹さんの言葉は、これからの私たちの行動の羅針盤のように思えます。

 「AIには肉体がない。つまり『生命』がない。だから人間の生命や肉体をAIが超えることはない」「『考える』ことは、科学で言えば、基礎科学のようなもので、(『速度と量』の価値観からすれば)効率的でなく、すぐに結果も出ない、早い話がすぐに金にならない。でもひたすら『考える』ことで、人間の世界は維持されてきたし、維持されていくものだと思います」「いい演劇も同じで、見終わった後に、そこに簡単な答えがあるのではなく、答えられない難しい問いだけがある。『人生』にしても『愛』にしても同じで、実は、答えではなくて、難しい問いでしかない。それを生きる人間の姿は、昔から変わらないし、これからも変わらないと思います。どれだけ、技術が新しくなろうがね」(毎日新聞2026年1月16日付朝刊オピニオン面)

 だからこそ、私たち一人ひとりが、他のために生き、それによって自分も満たされるという関係性が幸せにつながるはずだという「生物としての人間」の真理を前提に、それぞれの思いを大切にしながらコミュニケーションを図り、社会をつくっていきたい。

 市制施行前、市民の皆さまはどんな未来を思い描いていたのでしょうか。「広報こが」の最初の号を紐解くと、多くの期待の声が寄せられていました。

 「ふるさとの美しさをいつまでも残したい」(渡辺しか代さん)

 「人とのふれあいが培われる『市』になってほしい」(山本忠生さん)

 「生まれ育ったまちだから、自分の子どももいいまちだと思うようなまちであってほしい」(小石原文雅さん)

 古賀市は古賀町の時代から、都市と自然の調和を大切にし、市民の皆さまとの対話と交流を起点とした「共創」のまちづくりを進めてきました。地域で人と人がつながり、共に支え合い、助け合う。コミュニティの希薄化が広がる今こそ、私たち一人ひとりが何をできるのか考え、行動できる土壌を育み、郷土愛を醸成することで、誰もが希望を胸に未来に向けて共に歩んでいけるはずです。まちの原点は「人」にあります。広報こがまち最終号の中村哲さんのインタビューに長期思考と利他主義を象徴する言葉が残されていました。

 「人を助けることは、自分が助かること」

 まちづくりに終わりはありません。市長8年目の令和8年度も、このまちの来し方を胸に刻み、全力を尽くしていきます。市民の皆さま、市議会の皆さまのご理解とご協力、ご支援をお願い申し上げ、施政方針といたします。


※施政方針全文のPDFファイルを古賀市HPに公開しています。令和8年度予算案の概要とあわせ、ぜひご参照ください。
https://www.city.koga.fukuoka.jp/cityhall/work/kikaku/masterplan/shisei/

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